“アダムのりんご”
このところ、梅雨入りすると途端に晴れの日が続いたり、
五月に猛威を振るっていた猛暑が復活したり、
何とも臍曲がりな六月が多かったものだが。
今年は上旬から結構な暴れっぷり、
特に早生の台風や熱帯性低気圧が絡んでもいないまま、
ほんの1日で一カ月分の雨が降るようなところが あちこち出ており。
冠水したり土砂被害も出ているほどの様相は、
決して幸い扱いしていいことじゃあないけれど。
それでも…さすが お湿りの効果というべきか。
五月に真夏日がこうまで連続するのは記録的だと言われるほど
途轍もない猛暑が何日も延々と続いていたものが。
一気に一カ月ほど逆上ったかのように、
朝晩の清かな涼しさが昼まで保つような、
何とも過ごしやすい日が続いているのだけは ちょっぴり有り難いかも。
“でも、陽が出ないのはやっぱり困っちゃうなぁ。”
気温が高いから 冬場ほどじゃあないけれど。
それでも、室内干しでは洗濯物が ふかっと乾かないんだよねと。
相変わらずに 主夫の鑑、
手掛けるからには、それが家事であれ
いづれも理想の完遂を目指しておいでのブッダ様。
連日の鬱陶しいお日和には ついつい溜息もこぼれるらしく。
そんな形でというのは不本意ながら、
意志に連結する意識の覚醒と共に、
深い熟睡からのするするという浮遊感、
すなわち 現行現世への目覚めを感じつつ。
“あ、雨の音しないなぁ。
小鳥のさえずりも聞こえるし。”
今日は何とか晴れたんだろうかと、
まだまだ静かな早朝に垂れ込める、
周囲の気配を早くも拾っておいでなのも
ある意味で余裕というものだろか。
まだ合い掛け布団を使っているため、
時には暑いと蹴ったり もがいたりしてか、
足元側を大きくはだけていることも ままある寝床だが、
今朝は大人しくも整ったままであるようで。
“これに関してだけは助かるよねぇ…。////////”
一応 名誉のためにも申し上げるが、
そうまで寝相がやんちゃな如来様なわけはなく。
ただ、えと、あのその、
先の晩秋あたりから“おいで〜vv”をされての
同衾しているお相手がおり、
“…ちょっと待ってくださいな。///////”
はい、どうされましたか。
まだ眸は開いてもないのに、
頬から福耳から目覚ましいほど真っ赤になられて。(苦笑)
“どどど、同衾という言い回しは
男女間の供寝のことを指すんじゃあありませんか?//////”
一つの夜具の中で一緒に寝ることを指すそうですが。
まあ、例えば“お暇をいただきます”というのは、
表面上は休暇という意味ながら、実質は辞職宣言に等しいともいうように、
日本語って“実は…”という
想いも拠らない深い意味があったりするので、
よくよく考えて使わにゃいけませんからね。
“ほら〜〜。//////”
さすがは仏界が誇る知慧の宝珠、
知性だけじゃあない、奥深い感性も及んでのこと、
思慮の足らぬ言い回しへの訂正を求めた釈迦牟尼様と、
ほぼ同じ布団にくるまっておいでのイエス様こそが、
そんなやんちゃな寝相を時々発揮なさる張本人なのであり。
五月には記録的という暑い日が続いたころなぞは、
おいで〜と招いた愛しいお人を その懐ろから離したくはないけれど、
さりとて上下の布団へ籠もる熱には耐え兼ねたか。
無意識のうち、
それなりの葛藤(格闘?)をしたらしい形跡が朝には伺え、
ブッダがそれへ苦笑するというのが習いになっていたそうで。
“うんうん、確かにさらりと涼しいし。”
寝間着代わりにしているTシャツ越し、
間接的に肌へと届く、愛しいお相手の温もりも、
辛抱が要るよな寝苦しさを招くほどのそれじゃあないし…と。
うっとり口許をほころばせたブッダだったが、
“…………? あれ?”
何か変だなと、まず 気がついたのは。
確かに、接しているイエスの温みは感じるが、
日頃はこちらが彼の懐ろへ取り込まれている格好のはずが、
今朝は何故だか逆になっていること。
昨夜 寝入ったときは、いつもと変わらない体勢で、
そう、ブッダの側がイエスの懐ろに頬を寄せる格好で何か話していて、
そのまま寝落ちという流れで眠ってしまった筈が。
今の今は こちらの胸元へイエスがもぐり込んでいるらしく、
“え?え? 昨夜ってそんな寒かったの?”
おいで〜と呼ばれたブッダが、
来ちゃったvvと擦り寄ってくれるような間柄となる以前から。
あまりに寒い晩なぞは、
黙ってブッダの布団へ潜り込むという ちゃっかりを
こっそり やらかしていたイエスだったそうで。
今朝の二人は 丁度それを彷彿とさせる態勢になっており。
あれまあ、そこまで寒かったんだろうかと、
そこへ想いが及んだ途端、
「…イエス? 寒かったの? お腹とか冷やしてない?」
今度は心配になってしまう行き届きようが、
恋人同士であるにも関わらず、
ともすれば“慈母”属性が発露してしまう素地をお持ちのブッダ様で。
「いえす?」
毎朝早く起き出して、
町内をぐるりとジョギングしてくるのを日課にしている彼なので、
まだ時刻としては5時台という早さ。
寝坊すけのイエスがあっさり目覚めるはずもないのは毎度のことだが、
くったりと正体のないその肢体、軽く揺すぶりかけて気がついたのが、
“なんか…軽いし、柔らかい?”
ブッダとイエスは 背丈や体格にそれほどの差はない。
厳密に見れば、やせ形のイエスと ややふくよかなブッダであり、
運動が好きで動き惜しみをしない分、
柔軟な筋肉がしっかりついているのはブッダの方だが。
骨格はイエスの方がかっちりと大きくて、
その懐ろの深さや、肩幅、腕の尋は、イエスの方が広くて長く。
同じくらいの年代のころといや、
まだ王子だった余波できっちりと鍛えていた名残りがあってのこと、
ブッダのほうが肉付きがいいだけで、
同じような栄養状態だったなら、イエスの方が雄々しくも逞しかったかも。
柔和な笑顔や甘えん坊な態度から誤魔化されやすいが、
その実、その懐ろへくるみ込まれると
何て頼もしいことかとの安堵に覆われるし、
無駄なくついた筋骨も結構充実していて…いやまあ、それは今は置いといて。
「???」
このところの毎日、それが当たり前のこととして
彼の懐ろにきゅうと 収まりよくもぐり込み、
ともすりゃ甘えるような態勢で眠っていた側のブッダだからこそ。
この違和感は あまりに不可解。
ちょっと立ち位置が変わったというだけではないような、
何かこう、いつの間にか
別人がちゃっかりと入れ替わっているようなほどの差異を感じる。
今はそちらからの方が収まりのいい、肩口の小ささといい、
こちらの二の腕へ伏せている頬の柔らかさといい。
ほぼ同じところ同士が触れている、四肢や腰などの当たりの細さといい。
カーテンを引いたままの部屋だが、それでもありありと判るほど、
いつものイエスとは 明らかに寸法や質量が異なるようだというに。
だのに…不思議と譲れないのが、
「…いえす、だよね?」
このブッダには珍しく、
施錠もしているし、こうまで深々寄られて気づかぬはずがないとか云々、
いろいろ考慮した上で、他の人であり得ないとする“理詰め”の話ではなくて。
この温みや匂いは、この肌合いは、イエス以外の誰でもないと、
自分の五感がその感触を しっかと認識しているがため。
じゃあどういうことだろかという、深い困惑に襲われておいでなのであり。
混乱しまくりの逼迫に息が止まりそうなブッダをよそに、
「 ………〜ん、ぅんん。」
寝起きが悪いというほどではないながら、
夜更かしが多かった生活が培った体質はそうそう変わらぬか。
こうまで間近からの呼びかけへ、
やっとのことで ぼんやりと目覚めたらしいく、
ふにゃりという声を発した“イエス”であり。
「ぶっだ? どおしたのぉ?」
くぐもったような滑舌の悪い声で、
まずは“何かあったか”と訊いてくるのも
当然と言っちゃあ当然だろうが、
「あ……。」
それを訊いたブッダの驚きは 更なるものとなっており。
彼とて目覚めたばかりも同然だというに、
そんな安らぎの臥処へいきなり凶刃が降り落ちて来たかのように、
一気に目覚めを余儀なくされた意識は、冴え冴えと鋭いほどに澄み渡り。
浴びたばかりの驚きと混乱を何とか処理しようとしてのこと、
聡明な頭脳は、どんな苦難の中でもこうまで動かなかっただろう勢いで
現状を把握しようと稼働しておいで。
そんな解析のさなかでも、
さすがは如来にまでその解脱を果たした身でおわし、
「あ、あの…。」
放って置けば イエスはこのまま二度寝になだれ込まれるのは明白なので、
とりあえず目を覚まそうねと、
懐ろに抱え込んだ体勢のまま 一緒に身を起こすことにして。
掛け布団を押しのけるようにして横ざまに身を起こせば、
「う〜〜。」
まだ寝足らぬか、細い眉を寄せるとお顔をしかめたイエスであり。
その身は か細い芯に当たる背条だけが辛うじて立っているものの、
他に支えはないも同然で。
崩した正座の間へお尻を落とした子供座りのまま、
ブッダの胸板へ ふにゃりと凭れ切っているばかり。
しかも、まだその眸を開けてはおらずで、
これでは やはり二度寝は必定かと思われて。
「イ、イエス、起きてよ。もう朝なんだし、ほらっ。」
ふにゃりと凭れ切るその感触の柔らかさに、あああこれはやっぱりと。
いやな予感へ紛れもない現実が寄り添うのを、
もはや認める他はなしだろかと。
そこは四聖諦という観念真理を説いた開祖様だけに、
降りかかった艱難辛苦への把握も素早くて。
ただ、そうともなれば
こうして寄り添っていていいものかという、新たな選択が襲いくる。
修行の上で、混交はもとより共に居ることも善くはなしと説いていた身。
そこはさすがに、
慎みや戒めが最初からの仕様のように染みついていて、
心が淫蕩な方向へ揺らぐ恐れは一切ないのだが、
「まだ眠いよぉ。じょぎんぐ行かないのぉ、じゃあ寝てよぉよぉ。」
ぐにゃりと柔らかな肢体を完全に凭れかけてくる存在が、
誰かどこかのお嬢さんなら、いっそ問題はない。
“…なんでどうして、キミってばっ。///////////”
胸元や二の腕や、
互い違いになって咬み合ってる格好の腿の内側や。
接しているところから届く微熱は、
いつもの彼でもドキドキするほど悩ましいそれだというに。
今朝の彼は、何と“彼女”だったりしたものだから、
尚のことに落ち着けず、狼狽しきりの釈迦牟尼様なのであり。
「イエス、お願いだから起きて。眸を覚まして、イエスっ。」
こうなっては荒療治も辞さないぞと、
細い肩口を両手で掴んで懐ろから引き剥がし、
ゆさゆさゆさと揺さぶれば。
ああなんて線が細くなったか、
背丈も縮んで一回り小さくなったイエスが、
がくりがくりと力なく首を垂れさせる様子は、
“あああっ、見てはいられないっ!”
何て痛々しいことか…っと、
怖じけていては始まらない人が あっと言う間に腰が引けてしまい。
ごめんなさいごめんなさいと、無体を受けた肢体をぎゅうと掻き寄せ、
いたわるように抱きすくめてしまってから、
「…………っ、はっ。////////」
華奢な感触へ おおうと我に返るという悪循環。
とはいえ、そこまでの扱いにあっては、さすがに目も覚めてくるらしく。
特に、ぱふりっと勢いよく抱きすくめられた感触と
それは愛しくも大切な人の匂いには、
ああ起きなきゃ勿体ないという何かが働いたか、
「ぶ〜っだっvv」
いやん、今朝はなんか大胆なんだからvv、とでも思うたか。
まだ微妙に重さが勝っているまぶたを持ち上げると、
お顔を埋めていた懐ろから、無邪気な笑顔を上へと向ける。
まだどこかほろ酔い半分みたいなぎこちない動作だが、
「…………あれ?」
そうやって かなりの角度で顔を上げた自分の体勢から、
やっとのこと何か違和感を覚えたらしく。
「なんで? ブッダ、背丈だけ大きくなってない?」
キョトンとして細い顎をのけ反らせる姿がまた、
何とも無邪気で愛らしくって。
小柄になったり線が細くなったり、
あちこちがいろいろ様変わりしているというのに。
なのに ブッダには間違いなくイエスだと判るからこその尚のこと、
愛らしさも倍増しての、落ち着きを奪う存在に他ならず。
「あ…いやあの、えっと。//////////」
おかしいなぁ、
こうやって向かい合って座ったら目線も同じだったはずなのに。
カーテン閉めたままだから?
それとも、私がちゃんと正座してないからかなぁ?
でもでも…と、果敢にもブッダのお膝、腿へと手を置き、
そのまま ぐいと乗り上がろうとしたものだから、
「あ…わ…わわっ!/////////」
何て小さな手なんだろうか、
骨も細いし、それに力もいつもよりずっと弱くなってないか?と。
触れられたその一瞬に、ぐるんっと そんなこんなが頭の中を一周し、
何て可憐か、何て愛らしいと、目が回りそうになったが
“それでは何の解決にもならぬ。”
ぐぐうと何とか歯を食いしばるところが、さすがは苦行のエキスパート。
菩提樹の下での瞑想の中、女禍にもさんざん誘惑されたけれど、
そんな煩悩、 ンコの塊だと断じることで振り払った剛の者。
“…こんな可愛い存在をそうと見なすのは無理難題だが。”
こらこらこら、そうじゃないでしょうが。(笑)
何でどうしてと、ブッダに詰め寄り。
自分の側に変化が起きているとは全く気づいていないイエスを前に、
敢えて眸を逸らさずに見つめ合うと、
「……あのね、イエス。
その、……両手をこうやって、自分の胸へ伏せてごらん。」
あまりに露骨なポーズでは失礼かと思い、
鎖骨の下あたりに両手の指先をとんと突く格好を、
自分の胸元でやって見せれば。
その胸元へ頬がくっつかんばかりでいたイエス様、
何のおまじないかも判らぬまんま、
それでもブッダが言うのならばと思うたか。
「えっと…こう?」
真似をしたにしては微妙に違うが、手のひらが胸板へ伏せられたは重畳。
自分で胸元に触れたのだから、
さっそく違和感に気づいてくれるだろうと思ったものの、
「?? それからどうするの?」
こうしたら背丈が伸びるものかと思ったか、
ブッダのお顔を交互に見上げ、
かっくりこと小首を傾げて見せるのがまた、
何の疑いもない無垢さに満ちてのあどけなく……。
「ご、ごめんなさい ごめんなさい。」
そっか、それでは質感が手へ届かないのか、
そんなことを間接的に明らかにしてごめんなさいと。
それもまた 失敬だぞと後で怒られそうな大仰さで謝ってから、
「じゃあ、あの、あ・そうだっ。」
今度は自分の喉へと手を延べ、
そこを指先でやや力を入れて上から下へぐぐいと撫でて見せ、
「次は、こうしてごらん。」
何だか怪しいマッサージのお手本教室みたいですが。(う〜ん)
「えっとぉ、ここ?」
さすがにこれは気がつくかと、真剣真摯に目を見張り、
まだちょっと不思議そうなお顔のまま、
それでも言われた通りに真似をした、イエスの様子を見守っておれば。
「……? 何にもな…あれ?」
やはり何も起きないと言いかかったイエスが、
だがだが“おやや?”と途中で目を見張り。
そのまま、何度も何度も喉を撫で始めて。
「あ……。」
そういえばと、自分でも思い当たったものがあるものか、
両手のひらを自分のほうへと向けて、じいと見やり。
続いて口許をぱふんと覆って、そのままこしこしと擦って見せて、
「髭がない? それにこの声…なんか変だし。」
一気に落ち着きがなくなって、視線をきょときょとと揺らしていたものが、
満を持してハッと思いついたは、こういうことへの終着点か。
そちらもパジャマの代わりにしていた木綿地のイージーパンツ、
ウエストのゴムのところへ手をかけて、
ぐいと前へ引っ張ることで大きく開放したものだから、
「わ…っ。/////////」
ブッダがわあと慌ててそっぽを向いたが、
それだとてイエスの視野に入っていたかどうか。
下着ごと引いて覗き込んだらしい 彼いわく、
「……何にもなくなってる。」
本来だったら赤くなるよな所業のはずが、微妙に青ざめてしまい、
そのまましぼむ声と同じく、
薄い肩をそれはそれは小さく落としてしまった“彼”だったのでありました。
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*やってしまいました、女体化です。
いわゆる世に言う“にょた”でございます。
しかもイエス様のほうが、です。
冒険者です、ガンバと仲間たちです。(古いぞ)
*一応はタネも考えておりますので、どうかご安心を。(安心?)
ただ、尺がちょっとかかりそうなので、
こんなネタのは読めないわとしたお人には、
次のお話をずんとお待たせすることになりそうで。
あ、此処に書いても意味ないんだ、すいません。
めーるふぉーむvv
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